紫煙
道端に落ちた吸殻を見るたび、なにを思いながら吸ったのか、と思う。
きっとそれぞれに様々な思いを持ちながら吸ったんだろうが、どうしてもそれが良いもののようには思えなくて、強い情念を感じずにはいられない。
そして単なるゴミでしかないはずの吸殻たちが、まるで人の死骸とでも言おうか、そういう類いの重々しくて、おどろおどろしい何かに見えるのである。
特に夜道で出くわす彼らは、一際強い情念の持ち主で、死してなお、通りすがる私に自らの持つ(持たされた、と言うべきか)情念を訴えかける。
それを受け止めるわけにはいかない私は、ごめんなさいと自分の無礼を謝りつつ、足早にその場を立ち去る。
こうして吸殻は二度死ぬ。